異所性妊娠とは何ですか?
結論をいうと、異所性妊娠は「子宮の中の正常部位以外の部分に着床した場合」に診断されます。
そもそも、どのように妊娠成立するかというと…
まず、精子と卵が受精して受精卵になります。
受精卵は分裂を繰り返して細胞数を増やしながら、卵管を通過して子宮の中に移動します。そして、細胞を増やした受精卵が「子宮の中の正常部位」に着床して妊娠が成立します。
その受精卵がうまく移動できず「子宮の中の正常部位以外の部分に着床してしまった場合」に「異所性妊娠」となります。
なぜ「異所性妊娠」という名前?
異所性妊娠は、以前は「子宮外妊娠」と言われていました。
しかし、実は「子宮の中の妊娠」でも妊娠してはいけない部位があります。
たとえば、
- 子宮頸管(子宮の下の方)
- 卵管角(子宮と卵管の移行部)
- 帝王切開瘢痕部(以前に帝王切開をした患者さん)
などあります。
子宮の中の妊娠にもかかわらず、これらの部位は妊娠してはいけない部分です。
なぜかというと、組織として弱い部分だからです。
これらの部位に着床して、妊娠成分が大きくなっていくと、「破裂」や「大量出血」を来すことがあります。
つまり、子宮の中の部位にも妊娠してはいけない場合があり、その部位に妊娠した場合も「異所性妊娠」と診断されることになります。
「異所性妊娠」はどんな症状がおこりますか?
異所性妊娠の初期の状態で、妊娠成分が小さいときには基本的に「無症状」な場合が多いです。
しかし、妊娠成分が大きくなるにつれて「腹痛」や「性器出血」などの症状が起こります。
また、妊娠成分が破裂すると、お腹の中の大量出血から、血圧低下など「ショック状態」となり、「意識障害」や場合によっては死亡する場合もあります。
「異所性妊娠」はどんな検査をおこないますか?
異所性妊娠の検査
異所性妊娠を診断するために、「妊娠反応」や「エコー」、妊娠によって上昇する「hCG」というホルモン値の検査がおこなわれます。
実際の現場では、「妊娠反応陽性」にもかかわらず「子宮の中の正常部分に赤ちゃんの袋がみえない」場合に「異所性妊娠」の可能性を考えます。
とくに、異所性妊娠のほとんどは、「卵管」に妊娠してしまう場合が多いです。
エコーで「卵管」に明らかな妊娠成分を確認できれば、「異所性妊娠」と自信を持って診断できます。
しかし、妊娠成分が小さかったり、妊娠成分がエコーではわかりにくい部位にある場合は、妊娠成分をエコーで見つけられない場合があり、異所性妊娠を診断することが難しくなります。
異所性妊娠の診断は難しい
「妊娠反応陽性」にもかかわらず「子宮の中の正常部分に赤ちゃんの袋がみえない」場合に「異所性妊娠」の可能性を考えます。
しかし、異所性妊娠以外の可能性もあります。
具体的には…
- 正常妊娠:子宮中の正常部分に着床しているが、赤ちゃんの成分が小さすぎて確認できない場合
- 流産(生化学流産):子宮中の正常部分に着床しているが、赤ちゃんの成分が小さい時に死亡して、子宮の中にとどまっている場合
の可能性があります。
どのように異所性妊娠を診断するのか?
異所性妊娠と診断するためには、「正常妊娠」「(生化学)流産」の可能性を除外する必要があります。
基本的には1回の診察では、診断するのが難しいです。経過を慎重に追って、何回か時間をあけて診察していって診断します。
具体的には、
エコー検査で、明らかな妊娠成分が見えてくるまで経過を追ってみていくこと。
血液検査で、「hCG」(妊娠中に上昇してくるホルモン)値の推移を追っていくこと。
で診断していきます。
疑わしきは罰する
異所性妊娠は命を落としうるコワイ病気です。異所性妊娠が疑わしい場合には、診断が確定しなくても「手術」などの治療が行われる場合があります。
「異所性妊娠」はどんな治療をおこないますか?
異所性妊娠の治療は、基本的には「手術」になります。
お腹の中を観察して、妊娠している部分をみつけます。異所性妊娠のほとんどは「卵管」への妊娠です。
卵管への妊娠の場合は、妊娠成分の入っている卵管ごと摘出すること「卵管摘出術」が多いです。卵管を温存できそうな場合は、卵管に切開を加えて妊娠成分のみを除去することもあります。
基本的には手術による治療ですが、場合によっては、
- 「MTX」という抗癌剤を用いて治療すること。
- 全身状態が落ち着いていれば待機的に経過をみること。
もあります。