妊娠初期の出血の原因
妊娠初期の性器出血の原因として、「異所性妊娠」「切迫流産」(流産)「絨毛膜下血腫」「子宮頸管ポリープ」などが挙げられます。
異所性妊娠
妊娠初期に見逃してはいけない病気として「異所性妊娠」があります。これは、妊娠成分が破裂してしまうと、お腹の中で多量出血します。命を落とす可能性があるため見逃してはいけないです。
切迫流産・流産
「切迫流産」(流産)による出血は意外と頻度が多いです。自然流産率は「約15%」と言われており、皆さんが考えているよりも「流産」となる可能性は高いのです。
絨毛膜下血腫
赤ちゃんの袋のまわりに「血のかたまり」(血腫)ができる病気です。
赤ちゃんが育つには十分な血流が必要であり、妊娠中は出血しやすいです。赤ちゃんのまわりから子宮の入り口に出血が流れてくると「性器出血」として現れます。
子宮頸管ポリープ
子宮頸管ポリープは、子宮の入り口のポリープのことです。
ポリープは妊娠中はとくに出血しやすい状態となり、擦れると出血したりします。
その他
妊娠中は、血流が増えるため、出血しやすい状態となります。
とくに子宮の入り口の部分は、動きすぎたりすると、擦れて出血しやすいです。
妊娠初期の出血の検査
妊娠初期の出血の検査として、「視診」「腟鏡診」「エコー」「血液検査」などが挙げられます。
視診
「視診」では、出血している部分はどこなのか、どのくらいの量が出ているのか、なにか病変がないかなど見て確認します。
腟鏡診
「腟鏡診」では、「腟鏡」(クスコ)という器械をつかって、腟内や子宮の入り口あたりを観察します。出血している部分はどこなのか、どのくらいの量が出ているのか、なにか病変がないかなど見て確認します。
エコー
エコー検査では、「赤ちゃんの状態」や「赤ちゃんの袋」「子宮の入り口の長さ」などを確認します。
とくに、赤ちゃんが元気なのか、赤ちゃんの袋のまわりに血のかたまりがないか、子宮の入り口の長さなどを評価します。
血液検査
血液検査で「Hb」(ヘモグロビン)という貧血の値をみたり、診断のために「hCG」というホルモンの値を評価します。
出血の量が多いと、「鉄欠乏性貧血」をきたす場合があります。「Hb」(ヘモグロビン)という値を評価します。
また、「異所性妊娠」なのか「流産」なのか判断がつきにくい場合があります。その場合には「hCG」という妊娠性ホルモンの値を評価します。
妊娠初期の出血の治療
妊娠初期の出血の原因に応じて治療が行われます。
異所性妊娠
「異所性妊娠」では、基本的に手術で治療されますが、条件が合えば「MTX」という抗がん剤を使って治療を行うこともあります。
切迫流産・流産
「切迫流産」では、「ハリ止め」や「止血剤」などのくすりを使ったり、「安静」に過ごしてもらいます。また、「流産」とくに赤ちゃんが亡くなってお腹の中に残っている場合には「子宮内容除去術」という手術が行われます。
絨毛膜下血腫
「絨毛膜下血腫」では、血のかたまりが広がらないように、「ハリ止め」や「止血剤」などのくすりを使ったり、「安静」に過ごしてもらいます。
子宮頸管ポリープ
「子宮頸管ポリープ」では、出血がひどい場合には、擦れて出血しないように「安静」に過ごしてもらいます。
また、摘出しやすいポリープでは、子宮頸管ポリープを摘出する手術が行われます。
妊娠中期・後期の出血の原因
切迫早産
子宮入り口が開いてきた時に出血がおこり、その後に陣痛がともない赤ちゃんが出てきます。
「妊娠22週~37週未満(36週6日まで)」に赤ちゃんが産まれた場合は「早産」となります。妊娠週数によりますが、赤ちゃんの臓器が未熟な場合には医療介入が必要となります。
なお、「早産」になりそうな状態のことを「切迫早産」といいます。
「流産」や「早産」にならないようにするため、「切迫流産」や「切迫早産」を適切に診断して治療管理していきます。
「切迫流産」「切迫早産」では、安静とハリ止めの薬で経過をみます。症状がひどい場合は、入院管理が必要になります。
常位胎盤早期剥離
妊娠中の性器出血で、一番注意するのが「胎盤が剥れるときの出血」です。
胎盤は、母親から赤ちゃんに「酸素」や「栄養素」を渡すのに重要な役割をしています。胎盤が剥がれてしまうと、赤ちゃんの元気がなくなってしまったり、場合によっては死亡してしまう可能性があります。
「常位胎盤早期剥離」は緊急事態です。診断したら、すぐに赤ちゃんを出さなければなりません。すぐに下から産まれそうであれば「吸引分娩」「鉗子分娩」などをおこなって、少しでも早く赤ちゃんを出します。下から産まれるのに時間がかかりそうであれば「緊急帝王切開」となります。
前置胎盤
「前置胎盤」とは、胎盤が子宮の入り口近くに付いている状態のことです。
胎盤が子宮の入り口を覆うと、基本的には赤ちゃんは下から出てこれません。
仮に赤ちゃんが下から出てくる場合には、胎盤が先に剥がれることになります。赤ちゃんの元気がなくなってしまったり、場合によっては死亡してしまう可能性もあります。
「前置胎盤」と診断したら、帝王切開での分娩になります。前置胎盤で、胎盤が剥がれてくると出血しますが「警告出血」と呼ばれています。胎盤が剥がれて、赤ちゃんの元気がなくなってくる可能性があります。
状況にもよりますが「警告出血」による出血をみとめる場合は、早めに赤ちゃんを出さなければなりません。また、「前置胎盤」では「癒着胎盤」をともなっている場合があります。胎盤が剥がれるときに大量出血を来す可能性があり注意が必要です。
「胎盤が全く剥がれない」「子宮からの出血が止まらない」状況によっては、子宮を摘出する手術が必要になる場合もあります。
妊娠中期・後期の出血の検査
視診
陰部を観察して出血している部分を確認します。表面に何か出血を来すような病変がないか見ていきます。
出血の出ている部分はどこなのか、どのくらいの量が出血しているのか確認します。
腟鏡診
腟鏡(クスコ)という器械を用いて、腟内や子宮の入り口付近を観察します。
どこから出血しているのかを見て評価します。
エコー
腟口からエコーの器械を挿入したり、お腹の上からエコーを当てて検査します。
「子宮の入り口の長さ」「胎盤の位置」「胎盤が剥がれていないか」「赤ちゃんの元気さ具合」「羊水」などを評価します。
とくに、前置胎盤・常位胎盤早期剥離を評価するのに「胎盤の位置」「胎盤の後ろ側に血のかたまりがないか」などをみていきます。
切迫流産・切迫早産を評価するのに「子宮の入り口の長さ」(頸管長)や「子宮の入り口の形」などをみていきます。
モニター
「赤ちゃんが元気かどうか」「お腹のハリや陣痛がどうか」を評価するためにモニターをつけます。お腹にモニターの装置をつけて、「赤ちゃんの心拍の波形」「子宮の収縮の波形」を測定します。モニターの波形をみて、「赤ちゃんの具合が大丈夫か」「(切迫早産などで)子宮が収縮していないか」など評価します。